Discipline

これはあるビルで実際にあったお話です。ある日本の会社ABCは融資を受けている外資の企業XYZの社員(欧米人も日本人も含めて)を多数、自分の持ちビルの中に受け入れて共同のプロジェクトに就いて働いていました。

  • 市内中心部から少し離れた場所にあるその場所の周りにはランチを食べるようなレストランも殆ど無く、ビルの中にはお昼時になると「お弁当屋さん」が店を出し、様々なお弁当を売るのが常でした。
  • 外資企業のXYZの社員は大体混雑を避け、12時前に買いに行くのが常でした。ところが上司の手前もあって、12時のキンコンカンコンを聞くまでは席を立ちにくい日本の会社ABCの社員はそんなXYZの社員を決してよく思っていませんでした。
  • 日本企業内の会議の時に意見が出ました。「XYZの振る舞いは社内のモラルを乱す。厳しく律するべきである。帰るのは早いし」と。そして日本の会社ABCはそのビル内にある日、お触れを出しました。「契約しているお弁当屋さんは12時前には弁当を絶対に売ってはい」けません」。この「絶対に」というのが決意のほどをうかがわせます。
  • 当惑したのはXYZの社員です。彼らは弁当を買うという会社に対して価値を生まない作業を出来るだけminimumな時間で行えるよう時差で購入しようとしていたわけです。おまけに彼らはそのお弁当を10分もかからずに食べ終えたら、速攻仕事始めていたのです。朝はABC社員の誰よりも早く出社し、お昼休みも取らずに仕事をしていたのでした。ただでさえ、自分の会社でのオフィスの5分の1くらいのスペースに押し込められても我慢して、そのABCの旧態依然とした環境でやっているのに…という気持ちも裏にはあったのでしょう。
  • かたや、日本のABC社員は出勤時間よりかなり早く会社に着いても車の中で「規定の」出勤時間まで寝て過ごし、昼食後も1時のキンコンがなるまでは机に突っ伏してまた昼寝です。大体「節電」とかいってオフィスの蛍光灯を消してしまうくらいですから、仕事をする気も沸かないことでしょう。どうせ夜遅くまでだらだらとやるのだからと開き直ってしまっています。だらだらやっても遅くまでいる社員は「あいつは頑張る」といってもらえるんです。12時まではお弁当を買うことも出来ないのだから、昼休みは徹底的に仕事をせずに12時59分59秒まで寝て過ごそうとします。
  • 私はこれを企業のdisciplineに対する姿勢の違いの結果だと感じます。社員に自由度を与えながらも実績で勝負させるself-disciplineの世界と、出来るだけ社員の自由度を与えずtop-down disciplineで社員を縛ろうとするメンタリティーの違いです。
  • これは会社の大小に関係がないようです。私の前いた日本の会社は自由度も高くそこそこself-disciplineだったように思います。とても恐いのは社員はtop-downでdisciplineを押さえつけられるのに反比例してself-disciplineを失ってしまうと言うことです。